令和元年9月、「大野」の漢字を基に、地域で元気に遊ぶ子供の姿を思い浮かべながら大野保育園のシンボルマークをデザインしました。燦燦と日の光溢れる園庭で自然に抱かれ元気に遊ぶ子供の姿をイメージしています。
地・背景の太陽のデザインと黄色の配色は、太陽や光、子供の幸福感を象徴しています。
子供たちが健やかに育つためには、朝日を燦燦と浴びて目を覚まし、食事をたっぷり摂り、自由に、のびのびと、自分のペースで遊びこみ、しっかり眠る生活が必要であり、それが子供たちを幸福感溢れた「いのち輝く」生活へと向かわせることになります。太陽の光は子供たちの生命時計を整え、食事は子供たちの体をつくりエネルギーとなります。愛情たっぷりな環境で基本的な生活習慣が身に着いていくことは子供たちの幸せの元となります。「食う・寝る・遊ぶは子供たちの大事な仕事」です。
また、子供たちの存在そのものが希望の存在なので、子供の世界から光が八方に輝くデザインにしました。子供たちの笑顔溢れる大野保育園が大野地区のオアシスとなるようにとの願いを込めています。
左半分「大野」の「大」は、子供たちが大きく逞しく育つようにとの願いを込めて、古代文字の「子」と「大」を組み合わせて作りました。その右手(向かって左側)には「心」の古代文字を付け、手とし、右側は「野」の「土」の部分と繋げています。
造形活動の中心となる素材でもある「土」は、植物の命の源でもあり、私たちの存在を支える大地を構成する素材の一つでもあります。その「土」で自然素材を象徴し、豊かな自然体験、特に自然素材と関わり、手を使って造形活動を通うことで心が育まれていく子供の姿を表現しています。
造形活動とは、素材と関わりモノを作り出す活動です。大野保育園では子供たちが自然環境と語らいながら生活することを保育の柱としています。子供たちは身近な世界と出会い、感動しながら、素材と触れ合い、その特性を知り活用してモノを作ります。造形活動とは子供たちが彼ら自身の生きる世界を知っていく営みでもあります。
その過程で「これって凄いな!」「こうするともっと面白くなるかも」「うまくいった!」「楽しいな!」という体験を無数に繰り返し、自信を深めたり仲間と協力する楽しさを味わったりしていきます。そして、「もっと面白くしたい!」という意欲が高まっていきます。
造形活動を通して、自ら課題を見出し、よりよい生活のために創意工夫し、自ら課題を解決する体験を繰り返し、生きる力の根っこを育んでいくのです。自己肯定感(無条件に自分は大切な存在だと感じること)や達成感、自己効力感(自分はできるという感覚・自分に対する信頼感や有能感)、自己有用感(他人の役に立ったという感覚や他人に認められたという感覚)などの自尊感情をおのずから育んでいきます。
こうして感じること(入力)と表すこと(出力)を絶えず繰り返していく子供たちは、美術文化を創造します。子供の生活そのものがアートなのです。
「大」のフォルムは子供の躍動感も表現し、手の部分と合わせて感覚総体としてのリアリズムの世界を生きる{5管(感)を総動員して世界を知る生活を送る}子供たちが、遊び=造形活動を通して心と体が丸ごと育つ様を表しています。また、園生活を送る中で子供たちの意欲が育つ様子を頭部に見立てた円に赤を配色することで表現しました。
右側「野」は「里」と「予」が合わさってできた漢字で、「里」は「田」と「土」が合わさってできた漢字です。「田」を少し小さめに配置することで奥行き感を出し、子供(「大」)が、地域(大野)の田園風景を望みつつ園庭で遊び育つ姿を表現しています。
「田」の下の「土」も古代文字を取入れています。「土」は「土地の神を祭る為に柱状に固めた土の象形」であり、「野」の旧字体は「埜」、会意文字(林+土)、「大地を覆う木」の象形と「土地の神を祭る為に柱状に固めた土の象形」(「土」の意味)から「の」を意味する「埜」という漢字が成り立ちました。「野」のもともとの字である「埜」の成り立ちは、園庭の木陰で土を使い造形物を創る子供の姿を彷彿とさせます。また、「大野」の「野」には、園庭の「埜(ノ)から地域の「野(ノ)」への広がりやつながりも感じられます。
「野」の「予」ですが、「機織りの横糸を自由に走らせ通すための道具」の象形から、「のびやか、ゆるやか」を意味する「予」という漢字が成り立ちました。また、「こちらから向こうへ糸をおしやる事から、あたえる」の意味も表すようになったそうです。子供たちの生き生きとした姿は、私たちにエネルギーを与えてくれますね。
それから「予」は「豫」の略字でもあります。「豫」は、会意兼形声文字(予+象)であり、「機織りの横糸を自由に走らせ通す為の道具」の象形(「伸びやか」の意味)と「(ゆっくり行動する動物)象」の象形から「伸びやかに・ゆっくりと楽しむ」、「あらかじめ」、「ゆとりをもって備える」を意味する「豫」という漢字が成り立ったそうです。
子供たちには、ゆっくりとのびやかに今しかできない体験をじっくりしてほしいとの願いも込めています。子供たちが子供時代を子供として生きる大切さを象徴しています。
「予」の青のグラデーションは遊びが拡がり深まることで知性が豊かになる様を表現しています。子供が地域社会の中で、自然に抱かれ、自然素材と関わる体験を通して、創造力(素材と関わりモノを作り出す力や人と関わり仲間をつくる力)や絵的思考{想像力(予測する力、連想する力、思いやり、先見性)}等を育みながら成長して欲しいという願いも込められています。
また、子供たちが、多くの地域の方々と豊かに関わり合いながら、それぞれの個性を輝かせ育ち合って欲しいという願いを込め、シンボルマークの中に〇△□等の形を取り入れています。
全体に使われる色彩は、日月火水木金土のいわゆる曜日の体験を表現しています。黄色は、お日様の体験です。縁取りの黒は月・夜(暗闇・月夜、星空)の体験です。赤は火の体験、水色は水の体験、緑は木(森や林、木工、植物)の体験、黄色と青は金属や文明の体験、茶色は土(砂場、泥んこ、畑)の体験です。
これらは生物としてのヒトの原体験であり、人間としてのふるさと体験でもあり、脳を中心とした体が著しく発達する人生の原始時代である乳幼児期に必須の体験でもあります。
このシンボルマークは大野保育園の子供たちへの願いと大野保育園の保育理念を表現したものです。運動会で初披露しました。このマークをご覧になったときに、それに込められた願いを少し思い起こして頂ければ幸いです。
令和元年10月12日 社会福祉法人 敬愛福祉会 大野保育園園長 嵯峨淳心